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LobLoy’s diary

現実日記・妄想日記・夢日記

3が失われ、理も消えた


「3人ですか……一度に」

Aの言葉に僕は首を縦に振った。他に選択肢を生むのは好ましくないし、そのつもりもなかった。僕は何も言葉を添えないことにした。それにも関わらず、Aは執拗に「3人」について質問を重ねた。

「他に方法は?例えば1人ずつというのは」

「それはできないよ。一人ずつでは、誰かが欠ける可能性もある。全て上手く行くか、全て失うかのどちらかじゃないとね」

「3人というのは難しい話なんですよ。ロブ」

「それをやらなくてはいけないということを伝える為に、貴方にどれだけの時間を費やせば良いんですか?もう始まるのに」

僕が言うべき事を終えた後、Aは口先で「3」という言葉を転がし続けていた。言葉は口元から首を伝って、右腕に落ちた。人差し指と中指の狭間で転がり終えると、彼はその言葉を舌の裏へ丁寧に閉まった。
その世界では、3という数字に固執してはならなかった。その世界の約束事だから。けれど、その約束をしたのは僕ではないし、僕には約束を護らなくてはならない責務がまだ生まれていなかった。僕は余所者であり、そのルールには疑念と関心が尽きない。約束に魅かれていた事をAに告げたのには嘘がないし、その粗方が真実だった。実に興味を誘う話だったし、3の存在について関心を抱いていたのだから。
ただ、つまらない話が寄り添っていた。世界の約束について、その理を誰もが知らなかった。
Aに唯一告げなかったことがあるとすれば、僕は3の理を欲しているということだ。3について代替が無い事を建前に、僕は3を失う機会に少なからず心を躍らせていた。誰かの為に、誰かの事について語る事もせず、Aの顔を曇らせた時にそれは確信になった。
たった1m程の間隔で寄り添いあったアパートメントの一画で、その世界の数年の3が失われた。



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