読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

LobLoy’s diary

現実日記・妄想日記・夢日記

薔薇色の深度


目の前にある睡眠薬には頼りたくなかった。
眠ろうとしないのだから仕方ないのだけれど、使うのにかれこれ5時間が経ってしまった。
迷いには時間が掛かる。迷いなんてのは贅沢な人間のする事だと考え始めて、くだらない話に時間が過ぎてしまう事を嘆く。僕にはそんな必要がないはずだ。贅沢をする必要なんてない。迷い続けて、ようやく薬に手を伸ばす。
一人でいる事には慣れていると思っていたのに、弱々しい肺は目覚めたら、朝を迎えてしまうことに怯えている。時々、虚しさが身体を包んで、不意に訪れるお客さんに挨拶し始めると、僕は灯りを消すことができない。理由は考えてもわからない。引鉄も見当たらない。
友人の一人が寂しさから真夜中に連絡を寄越してくるのを思い出す。僕はその寂しさを共有して彼女の安堵に効用を見る。それは、僕自身のものでもある。けれど、僕には彼女の様な真似をする気が起きない。
僕自身の虚しさは何処に投げ込んだら良いのか、疑問に思ってしまう。誰かにそれを聞いてもらいたいわけでもない。肺の捻れについて考えながら、一人で答え合わせをして終わる。
空が青くなっていく。裏手にある音もしない高校の体育館や、真新しくてまだ塗料の赤みが強い自動販売機、整列したまま置き去りの車や、庭先の果てた草花を朝の4時が青く染めている。時間は朝の仕事を始めている。
今日を過ごしたら、明日が来てしまう。ひぐらしが居なくなって、その先にはもう秋に挨拶をしなくてはいけない。
頭を抱えてしまうのは、僕が大泥棒や、伝説的な義賊でもなく、動物とテレパシーの会話も出来ないし、幽霊が見えないからで、スパイにでもなって世界の史学のほんの端っこに関わっていない所為か、それとも僕のために生きなくてはいけないからなのか、と真剣に考えている。自分の為に生きるって酷くどうでも良い話だ。自分の為という言葉がきな臭くて好きになれない。誰かの為に生きているのが人生の理由には最適だ。責と義に助けを借りなくてはならない。そうじゃないと、僕は自分の価値を見定められない。一人じゃないと生きられなかったのに。僕はひどく弱い人間になった。本当に弱さ以外には何も持っていない。それだけはもう隠すのもやめてしまったけれど。弱さをしっかりと認めて、薬を飲みこんで、僕は歳を取るたびに人間になっているんだと何かに話している。




f:id:LobLoy:20150819233334j:image