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LobLoy’s diary

現実日記・妄想日記・夢日記

ビッチェズ・ブリューはもう聴かない


車を運転し始めてから3時間半。僕は疲れ切っていた。迷子になったらトム・ヨークの唄は聴きたくない。ロバート・グラスパーも昼前には悲しくなってしまう。ジョン・ゾーンとノイ!の2択で、無理を言ってソフトマシーンに変更してもらうことにした。いつ買ったのかわからないアイスコーヒーの中身に煙草が浮いていて、助手席の夢語り屋は窓の外を眺めている。

ジャズ・ロック第5幕。動かないイコライザーは、28のボリュームで賄われる。

「暗い歌が好きだろう?」と夢語り屋が言った。

「そうですね。暗い歌が好きです」とニューオーダーのセレモニーを聴きたい僕は答えた。

「君がどういう人間なのか分かってきたよ」と夢語り屋が言った。彼は僕の分析をあれこれし続けている。

「そうですか。分かりやすいのかもしれません」

「君はプログレの変態野郎だな」

「そういうことです」

第6節ジャーマン・プログレ系譜、またはスクエアプッシャーについて。

夢語り屋が、自らの夢と野望と理想と虚構と願いと執着と女と音楽について語っていた。数人がかりであるものと、何も要せぬ夢について語っていた時、僕の頭の中はチョコミントのカップアイスしかなかった。

僕は東京に戻りたくなる。自分の夢について考えてみたけれど、チョコミントのカップアイスしか思い付かないことに虚しくなった。家に帰って、何かを思い浮かべよう。夢語り屋のいやらしい眼に晒されない僕の部屋で。夢語り屋には、この時間がうってつけだ。彼は夢の一端に駒を置きたがっている。良い頃合いを前にしているのだと彼の眼が僕を囲っている。何かに顔を舐めまわされている様で苛ついてしまう。

「夢が無い」なんておかしな話だと思い込んで、彼の声のほとんどを遮った。大げさじゃない暮らしを願うなら、彼にまともな幾つかを示す必要があった。彼の夢を肯定し続けている最中に留めていた事を。明日にでも僕の夢が生まれたら、このニヤケ顏は無かった事にしてもらわなくてはいけない。僕の夢と野望と理想と虚構と願いと執着と女と音楽を語る順番が、明日からは必要となるように。



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