LobLoy’s diary

現実日記・妄想日記・夢日記

僕には、あの時の


「私は帰ってこないよ、ジョバンニ。今日はナポリの試合があるの」

マウラが僕にそう告げた夜に、ローマではフーリガンによる警察沙汰の凱旋が行われていた。直ぐ近くのトラットリアで唄うダリを窓辺から見た夜の深くで、赤い光と歌声が地鳴りの様に遠くから迫っていた。それを確かめて、窓をしっかりと閉め直し、僕は2度目の眠りについた。

マウラがドミトリーに戻ったのは翌日の深夜、または翌翌日の始まりだった。彼女は一仕事終えた後の顔付きで、ゆっくりと6つあるベッドの一つに体を沈めた。仕上げにアルコールを求めた彼女の魂が、フレーバーウォッカとピーチリキュールを交互に内臓に落としていった。ゆっくりと規則的にマウラは眠りにつく。サッカーを観るのには、僕の関心と集中力は足りなかった。それがオペラなら話は違うけれど。

マウラは翌る日にも、何処かへ向かった。彼女の仕事が何なのか、僕には分からない。ドミトリーに永く住まう彼女が、どこでお金を手にしているのかわからない。でも、彼女はそこで生きていた。サッカーを愛するがゆえにスタジアムで観戦し、ドミトリーでその日暮らしの生活を重ね続けている。まだ結婚をしていた頃の話をマウラから訊いた時、「子供を授かれば、ここには居なかったはずだ」と寂しそうに彼女は言った。人生の岐路が彼女にも有り、サッカーの試合の代わりにナポリの片田舎でゆっくりと海を眺めていたかもしれない。

そんなこんなで、唐突に人生の岐路が目の前に姿を現した僕の9月17日もそろそろ終わりかけている。



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