テレパシー

『幸恵が引っ越すから家が無くなる。仕事もちょうど無くなったし、暇だからカナダに行くよ、って貴方が私に話したのは夢だよね?妙にリアルで。LINEの履歴とか見ちゃったよ』

「それ、ほぼ当たりだね。彼女に恋人が出来たから、僕は家を出る事にしたんだ。宿無し状態に加えて、職場も監査のおかげで解散するかもしれないしね。妙に当たってるね。一つ当たっていなかったのは、カナダに行くという手があったのを、僕が見越してなかったことだ。いい手だな」

『テレパシー?』

「そんな……いや、でも当たってるからな。不思議なものだね。そっちへ行ったら、どれくらい暮らせるかな?無一文は」

『ただの観光ビザなら半年は住めるよ』

「そうか。君はあとどれくらいいるつもりなの?それに、働けるのか?」

『私はあと9ヶ月ちょっとかな。ちょっとブラックなとこなら働ける』

「よし、カナダだな」

『絵奈が、泣くわね』

「そんなことないさ。君が居なくなった時に比べたら、僕なんてどうでもいいことだよ」

『いざとなったら、絵奈のお世話になるかもよ』

「ないね。それはない」

『本気ならマスターに聞いとくわよ。8割は大丈夫だと思うけれど』

「そうか。少しだけ待ってくれよ」

『うん』

「あのさ、君のテレパシーはすごいな」

『送ったのはあなたよ』

 

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