12/11/2015 それは真実に近いものだった

 
目覚めたのは昼過ぎだった。誰かを愛さないと不幸になってしまうから、ただ、其処で目にした人を愛そうとする夢を見た。
 
偶然にも彼女には愛する人が居なかった。または、好意が育まれている存在はいたかもしれないが、愛するには至らなかった。
 
だから、僕達は互いに安堵した。愛していると思い込むだけで、背中の直ぐ近くに居た不幸がこの肩にその手を置かなかったのだから。
 
僕らは、不幸が過ぎ去るまで愛し合うと誓う。
 
不幸が無作為に人を抱き上げて、空へ連れ去っていく間に、愛が失せてはしまわぬように。
 
彼女は悲鳴をあげる人々を見つめる。僕は彼女の顔だけを見つめる。彼女の瞳が下から上へと動きを重ねる。恐怖は愛を束ねている。 
 
誓いの最中、僕は愛が欠け始めていることが分かっていた。不幸が少し離れた所から、僕達を眺めている。恐怖で彼女の指先が僕の腕に薄い爪痕を残す。時折、愛には愛以外に後押しするものが必要だと考えていた。それが恐怖であり、敬意、博愛の余り物だとしても。またはそれが条件として代替する。
 
体を震わせて涙を流している彼女の気持ちを考えていないわけじゃない。
 
「かわいそうに」
 
僕は謝る事もせず、彼女の体を離した。
 
愛が消え失せたのではない。言葉にはならないけれど、それは真実に近いものだった。
 
 
 
 
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