16/11/2015 さようならは、26回

 
「あれかな」
 
『いや、到着の便ですね』
 
「そうか。あれは?」
 
『ロブロイさん、あれも到着便ですよ。もう30分も待っていますが、1機も飛んだのを見てません』
 
「もしかして離陸の滑走路ってここじゃないのかな」
 
仕事で30人あまりの中国の人達を見送る為、午前10時の羽田空港に居た。
 
空港への到着予定が早まったので、港内で時間が過ぎるのを待っていた。
 
羽田空港の展望テラスへ向かうと、飛行機を真近で見ようと集う子供達の身体が、優しげな柵にもたれ掛かっている。
 
僕は彼等と一緒になって30分以上も滑走路を眺めていた。
 
飛び立つまで時間があるというから、野外で飛行機を見送る気になったけれど、僕は直ぐ右側に望遠鏡が設置されていることに気が付いた。
 
彼らの飛行機が離陸する姿は、ここから目視できないかもしれないと思った。
 
到着便の飛行機から迫る唸り声にも似た音は、冷たい身体に響いた。
 
『中国へ、一緒に行きますか?』
 
とCが僕に訊いた。
 
「さっきも他の人に同じ事を言われたよ。でも僕は行けないな。今行くと戻れなくなりそうだから」
 
『ははっ、大丈夫。帰れますよ』
 
「いや、気持ちの問題だよ。僕はこの国が好きじゃないみたいだからさ。最近は何処かへまた飛び出してしまいたくなる」
 
『日本にも良いところがあります。もちろん悪いところも。どこの国もそれは同じだとは思いますが』
 
「でも、僕はそれをまだ知らなかった頃に、今でも戻りたいんだと思う」
 
 
 
 
 
 
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