Kの場合

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「私ね、シャンパンの下から上がってくる泡を見ているのが好きなの」
 
泡付きの黄金色した液体がある日には、Kの言葉を思い出す。
 
あれから飲み物を口へ運ぶ女性の手を眺めるのが多くなった。
 
僕の内側では、今ここにある手は出てこない。
 
異常に細い指を従えて、爪の先端が目の端っこみたいになっている手を映している。
 
氷がガシャガシャと音を立てているのが耳に入って、僕は現実へと引き返す。
 
その瞬間、いつも不思議と悲しくなるけれど、それは言わないことにしている。