LobLoy’s diary

現実日記・妄想日記・夢日記

バルビゾン

f:id:LobLoy:20170316021836j:image

 

「大切な人を囲う必要があるのだと思うんです」

 

彼女は黄金色の液体が満ちたグラスをカウンターテーブルの端へ退かし、両の手で大切な者達を示した。

 

「つまりですね、ここからここまでが関わり合いを持ち続けていたい範囲だとします」

 

シュッ、シュッ。テーブルへと振り落とされる真っ直ぐな手の動き。

 

『そうか、それで?』

 

「それで気が付いたら、大切な人や大切になりそうな人、大切だと思い続けているけれど会う事もない人が段々増えていく。私の現在では、ここからこの中の範囲が濃い存在の人達。もちろん、現在の人はいつも身近にいます。でも今までのこっちの古い範囲の人達がいつの間にか2人くらいになってしまったように思うんですよね」

 

シュッ、シュッ。美しさを称えた手の動き。

 

『君はカステラを分けるのが上手な人?』

 

「は?いや、真面目な話。だから大切な人をこの手の範囲から選別するしかないのか、現在の間でしっかりと囲うべきかとか考えちゃうわけですよ」

 

『難しい事を考えるね。囲ってないと消えてしまうものなのかな』

 

「考えません?」

 

『どうかな。あ、この前バルビゾン派の小さな絵画展を見る機会があったんだ』

 

「え?なんですか、それ。ば、え?」

 

自然主義の芸術家達がバルビゾンという村に集まって絵を描いていたんだよ。自然についての絵を。今の君に似ているかな。彼らは、その当時、彼らの世界が出来上がっていたわけで、その中で繋がりが強固になる。いつのまにかバルビゾン派、なんて呼ばれる』

 

「ふむふむ」

 

『数十年続いたんだよ』

 

「数十年ですか」

 

『長いと思う?数十年だから、人生の全てじゃない。僕が気になるのはバルビゾン以外の人生だ。風景画に居座る女性の姿は、とても美しかった。それを見ると彼らには木や羊や自然だけではなかったのだと感じる。その女性をどこかに置いてきたのか、ずっと側にいたのかは知らないけれど』

 

「ふーむ。何か難しいですね」

 

『時間が経って、どんな繋がりが生まれて、何が消えたのかを考えるなんてね』

 

「あ、私に返ってきた?……考えませんか?」

 

『選んでるのは君かもね』

 

「すべてを囲うのはやっぱり難しいのかな。でも変わっていないものを知るのは悪くないですよね」

 

『もう一杯、同じ物でいい?』

 

「はい、お願いしますー」

 

 『とりあえず変わらないものを頼みましたよ』