人魚
『夢の中で、大きな水槽に僕は居て、人魚と出会ったんだ。
僕はその人魚をとても愛しているって始めから分かっていて、だから、人魚の傍へ行きたくて仕方がなかった。僕はその水槽の端っこから人魚に向かって泳ぐんだよ。
その途中、意味が分からないけれど、黒髭の海賊船長や、ノートルダムの薔薇売りが僕を邪魔するんだけど、彼らの事なんて気にもならないから、僕はただひたすら人魚に向かって泳いでいく。
なんとかその人魚の傍まで行って、僕はその子を抱きしめる事ができてね、強く抱きしめた時に、あぁ、さっき薔薇の一輪でも買っておいたって良かったんじゃないかってふと思ったんだよ。
でも、そう思った後、彼女にちゃんと愛してると伝える前に、そのまま目が覚めちゃってさ、僕はすごく悲しくなってしまったんだよ。
やっと彼女を抱きしめた時の胸の痛みは覚えているし、言葉にできない言葉があったのも覚えてるのに、僕は、彼女がその時にどんな顔をしていたのか、まるで思い出せないんだよ』