ルポルタージュ
「最近、特にやりたいこともないんだ。本当にやりたいことって考えてみたら、今の僕には無いなって」と僕は、絵里に言った。
「じゃあ、何かのルポしなよ」と彼女は言った。
「ルポ?」
「気になるものを取材して、発表する。あなたは、まず気になること見つけなきゃね。でも、そしたらやりたいことって、もう見つかってるかもよ」
とりあえず、僕はルポのネタを探すことにした。
そもそも、ルポとは何か。
現地や現況の取材を通じて、取材対象の真実・実状を誰かへ届けるものだ。
「図書館にでも行ってみなさいな。宝庫へ」と彼女は言った。
調べ物じゃ意味が無いのではないか?
そんな疑問を抱いたまま、僕は散策をする。
「気になることねぇ」
街路樹、水辺、ひび割れた道路、つまらない字体の看板、サンタクロースのビラ配り、カフェのテラス席。
いつもなら気にも留めない道を、眺めては横切って、僕は手を動かした。
30分程で、幾つかメモに記した。
【気になること】
・世界で、初めて水面に自分を見た人
・ティッシュ配りの心理
・やりたいことがない人の為の求人サイト
・ベンチを作った後の幸福度
・鳥のくちばしの意義
・真冬のビーチパラソル
・絵の額縁を作るという仕事
・風船の役割
・そもそも旗は、必要か?
・サンタクロースの寿命
・レンガの家の建て方
・この世で最後に残るもの
メモを眺める。
僕は絵里に何を発表するのだろう。
阿呆らしくなって、立ち止まる。
気になることを見つけるって、好きなことを見つけるのにも似ているのかな。と僕は思った。
それって誰もが探していて、探さないと見つからないのかな。
何かちょっとだけ、違うんじゃないかな。
あぁ、コレも付け加えておくか。