2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

レーズン・ラム

人は唐突に熱が出た場合、薬を飲んで楽になると、まだまだ今日はいけるなと思って、クイックルワイパーを乾拭きとワックス両方やってしまう事がある。 しかし、問題は綺麗になった床の上で寝そべって、冷たくて気持ち良いなぁとか言って、漫画を読んでる合間…

あの子の場合

あの子の夢を観た。彼女について覚えている事は多くない。直ぐに思い出せたのも、彼女の左胸と目くらいだ。僕は、彼女の名前が気になっている。 昼下がり、大体はベッドの上に居た。 「どうして左の胸が大きいの?」と僕が聞く。 「分からないけど、心臓があ…

え、何で?ステーキじゃん

綾香と美味しいお肉のお店へ来た。 ステーキも、ハンバーグも、 とても美味しそうだ。 「なあなあ、綾香!」と僕は彼女に叫んだ。 聞いて欲しいことが、あるのだ。 「何?」と綾香がメニューを眺めたまま、返事をした。 「ハンバーグがビーフ100%なんだっ…

宝物の話

箱の中が、キラキラしていると思った。 ずっと幼い時の話だ。 僕が、箱の中を不思議そうに見ていたら「どうしたの?」と母は聞いた。 キラキラしたものがある、と僕が言った。 母は、1つ1つ説明してくれた。 「赤いのはルビー、青いのはサファイヤ、緑色は…

嘉瀬君が言うには

嘉瀬君が言うには、全身から脳に向って眠くなる成分が行き渡るのを想像すると、直ぐに眠れるのだそうだ。 僕は中学生の頃から、ソレを信じて幾度となく試みたのだけど、成功した事がない。 嘉瀬君が言うには、10分程で眠れるらしい。 僕の場合、眠くなる成分…

可愛いだけじゃ、許されない

「ねえ……」と言って、綾香は僕をじろじろ見ている。なぜか不機嫌そうだ。 「ん?何?」と僕は言う。 「外で食事をするって言ったわよね?ちゃんと着替えてから来なさいよ!」と彼女が言う。やっぱり、怒っている。 「え、ごめんよ。この寝巻大好きだったから…

小高君の場合

1 『グルゥ……俺はお前らが憎い。お前らの所為で俺はこうして沢山の人間を殺したんだ。今さらどうもできやしないのさ』 ドラゴンは僕にそう言った。大きな翼を持ち黒々とした硬い皮膚に覆われたドラゴン。瞳は真っ赤な色をしている。その眼は泣いている様にも…

父ちゃん、何かハウってる

「もしもし、どうしたの?」と僕は言った。 急に父から電話があったのだ。 「ん?いや、元気でやってるかと思ってな」と父は言った。 トゥルリトゥルトゥル…… 「僕は元気だよ。そっちは?」 ギィーピィーーー 「俺は元気だ」 トゥルゥ、ピィー、トゥーントゥ…

綾香の場合

3階建てのカフェの喫煙席。 コーヒーカップにスプーンを当てて、無闇に音を鳴らしている男がいる。僕のことだ。 その向かいで僕とスプーンを無視して、何かを喋っている女が綾香である。 彼女がうるさいからやめろと言うので、とりあえずスプーンを手から離…

深瀬の場合

0 Facebookに友達申請をしてきた正芳に許可をするかどうか躊躇って、僕は放置している。もう2ヶ月が経過した。そんな正芳に捧ぐ 1 僕と正芳は、真夜中の海にいる。その砂浜には朽ちた船が埋まっていた。船体の上下は逆さまで、船の上部は地中に隠れている。…

サルトルを飾る

僕には本が好きな友人と、本がそんな好きじゃない友人がいる。本が好きじゃなくても、大してかまうことじゃない。でも、今日は本が好きな人間の話。 どんな本が好きなのかは人それぞれで、僕と会う度に哲学書の話をする者や、探している画集や写真集を僕に知…

人魚

『夢の中で、大きな水槽に僕は居て、人魚と出会ったんだ。 僕はその人魚をとても愛しているって始めから分かっていて、だから、人魚の傍へ行きたくて仕方がなかった。僕はその水槽の端っこから人魚に向かって泳ぐんだよ。 その途中、意味が分からないけれど…

軌跡階段

僕と麗子は、白い階段の前にいる。私が作った階段なの、と麗子が言った。辺りは真っ暗だった。暗闇と言うより、ただの黒い空間のように思えた。彼女の姿は見える。もちろん階段も見えていた。そして、止むことのない緑色の紙吹雪が頭上から延々と降っている…

二日酔いライダーも、旅がしたい

「んーバイクの免許でも、とるかな」 というわけで、何となく自動車教習所へ通う事にしました。 10月中旬から開始し、第1段階が修了。今日から第2段階が始まる。 そして、僕は……マジ吐きそう。二日酔いで。 第1段階の教習も、半分は二日酔いで受けてい…

ゾーイとズーイ

本を片手に、風呂の中でプカプカと浮いているのが好きだ。 生温く、冷めた湯槽でも構わない。 水中にいるだけで安心感が芽生える。 その度に犠牲になる本は、新潮文庫が筆頭で、カミュとサリンジャーには申し訳なく思ったりもする。 久々に風呂で『フラニー…